漂流ラブレター

きらめきをだきしめる

音楽コンプレックスをこじらせた人間が音楽集団SixTONESのオタクをしていた

SixTONESというアイドルのおかげで音楽を憎まずに済んだ。

 

人生、二十数年目。決定的に打ちのめされた瞬間があった訳ではない。ただコツコツコツコツとダメージが蓄積されて、物心ついた頃にはすでに音楽というものに対して明確な苦手意識が芽生えていた。

 

私がピアノを習い始めたのは三歳のときらしい。らしい、というのはピアノを習い始める以前の記憶など私には少しも残っていないからであって、その証拠に、幼い私は自室にある大きなピアノは備え付けの家具や家電のようにそこにあって然るべきものだと思っていたし、水曜日というものはピアノをするために存在する日なのだとなんとなく思い込んでいた。

裕福な家庭で育ったわけではない。けれど、昔からピアノの習い事に強い憧れを持っていた母は、子どもが生まれたらどうしてもピアノを習わせたかったのだと言う。そんな母の願いにより始めた習い事は結局十数年続け、もちろん未だ我が家にピアノは置かれたままだ。私は人よりもほんの少し、音楽に触れる機会に恵まれていたのかもしれない。

しかし、それに比例して音楽への好感度も高くなるのかと聞かれれば否、それはまったくの別問題であると声高々に答えよう。

私は音楽が本当に苦手で苦手で仕方なかった。

 

なぜかと聞かれれば答えは単純明快。間違いなく、私には音楽センスというものが皆無だからだ。

三歳からピアノなんて習わせてもらっていたくせに恥ずかしすぎるけれど、ドが付くほどの音痴だし。逆に音外すってなに?(外してるか外してないかさえまず分からない) リズムを取るってなに? おいしいの?って感じである。

 

そもそも長年していたピアノがめちゃめちゃに下手くそだ。どれほどって、それはもう、ピアノをしていましたなんて絶対に口外してはいけないと心に誓うほどに。

母には悪いけれど、三歳からピアノなんてしていたことがむしろ私の音楽へのコンプレックスを加速させたのだと思う。友達とカラオケに行けば一人やたらと点数が低くて恥ずかしい思いをするし、家族や親戚の前で歌えば「お経かと思った(笑)」とからかわれるし、妹にはたまに「歌うな」って真顔でキレられるし(そんなことある?)(いっそ笑ってくれ)

音楽に触れる機会を人より与えてもらっていたからこそ、人より音楽で劣る自分が恥ずかしかった。

 

これは人生で数本の指に入る消し去りたい過去の話だけど、中学生の頃、クラスに他にピアノを弾ける人がいないからと頼み込まれて合唱コンクールで嫌々伴奏をしたことがある。

もちろん他のクラスの伴奏者たちもいる訳だけど、みんな私よりもピアノ歴が短いらしいのに圧倒的に自分よりも上手で、私はガチ泣きしながら当日まで練習した。……という事実だけでも充分苦い思い出なのに、なんと本番当日、私は緊張のあまりか途中頭が真っ白になりクラスの合唱を数十秒間(体感としては数十秒どころの話ではなかったけど)止めるという大失態を犯した。あんなにも練習したのにまさか、ここで。

体育館にいた生徒、先生、保護者……数百人全員が気まずい雰囲気に包まれ、その後誰も口にすることのなかったあの合唱コンクールは人生トップスリーに入るトラウマだ。

あの時失敗した選択曲、いきも◯がかりの『茜色の約束』を聴くと未だに恐怖で泣けてくるので、できれば一生耳にしたくないと思っている。まじで。

※ちなみに茜色の約束の難易度はめちゃくちゃ易しい

 

少しだけ言い訳させてもらえるならば、音楽ができる人は耳がいい傾向にあるらしいけれど、恐らく私は昔から耳がそんなに良くない。学生時代の聴診検査では何度か再検査させられたし、昔から他人の話を聞き取れないことや聞き間違いがあまりに多い。

思春期ど真ん中の中学生の頃には、耳が悪いから無意識に声が大きくなっているということに気付き、なんだか色々とショックだった。今も気を抜けばすぐに声が大きくなるので結構気にしていたりする。

(ちなみにピアノが下手なのはお前の努力不足だと言われればまあそうなのかもしれないけれど、苦手なりに頑張っていたので許されたいと思う。)

 

 

ここまで熱く語ればもう充分に分かって頂けると思うけれど、長らく私の人生において“音”は“楽しむ”ものではなかった。どう足掻いても苦手意識の対象でしかなく、恥とトラウマと黒歴史をこねくり回したコンプレックスの象徴みたいなものだ。

そんなものに関わり合いたいはずもなく、実際、親に土下座する勢いで頼み込み十五歳でピアノのレッスンをやめて以降、自室のピアノは何年も埃を被っていた。友達とカラオケに行った時はみんなで歌える曲を選んでなるべく一人では歌わないようにしたし(もしくは音を外しても分からなさそうなマイナーな曲を練習して歌った)、好きな音楽やアーティストを尋ねられても……特には思いつかない。

 

 

そんな私がつい先日、SixTONES初のフルアルバム『ST』を引っさげたツアー、“on eST”ライブ配信を観て『音楽って最高だ!』と思ってしまった。これは大袈裟なんかではなく、本当に、私にとって「何が起こるかはわからないなんてさ」と歌って踊り出したくなるような奇跡みたいなことであった。

 

そもそも私がSixTONESを応援し始めたのは今から約二年ほど前。樹ちゃんおたおめブログでも書いたけれど*1、私を確実に沼に突き落としたのは自担・田中樹ちゃんのすとーんずのぶろぐ*2で、私はSixTONESの音楽というよりはSixTONESの人柄やメンバー同士ないしファンとの関係性、軽快なトークなんかに惹かれてSixTONESのファンになったんだと記憶している。

もちろんSixTONESの音楽はその当時からバチバチギラギラしていて素敵だった。だけど、前述の通り私は音楽を愛しているわけでもないし、語弊があるかもしれないけれど別にアイドルにハマりたての当時の私は音楽性というものをそこまで重要視していなかったのだ。

だけどどうだろう。いざSixTONESを追いかけ始めてみれば、ひしひしと伝わってくるSixTONESの音楽に対する情熱、愛情、こだわり………うわ! この人たちめちゃめちゃ音楽が好きな人たちじゃん!

 

好きな人の好きなものは好きになりたい!なんて思った訳ではないけれど、たぶん強い感情って周りの人にも強い影響を与えるもので。

まず音楽というコンテンツに触れる6人は本当にいきいきとしていて見ているだけで私も胸が躍ったし、この星のHIKARIやAmazing!!!!!!、Japonica StyleなどSixTONESのオリ曲に限らず、SixTONESがリスペクトして歌ったり踊ったりする曲すべてを大好きになった。

気がつけばジャポとかKAT-TUN兄さんのSIX SENSESを陽気に口ずさん出たし、何よりも今思えば本当にすごいのが、ライブでお決まりのこの星のHIKARIでファンが歌うパート。あれ、毎回普通に歌ってしまう。変に気を使ったりせず(でも音外してたら周りの人ごめん…)めちゃくちゃ楽しいの。あの一体感、最高。

 

音楽への警戒態勢が弱まったことを自覚したのは、「よ〜し、SixTONESが歌う曲に限らずSixTONESが好きな曲も色々聴いて見るかー!」と自ら音楽に対して積極的な行動を取った時のこと。

もちろん音楽を完全に遮断するなんて無理に等しいし別にそこまでしようとも思わなかったしで、それまでも音楽と絶縁をしていた訳ではなかったけれど、やっぱり新しく音楽を求めて自分から動くなんてことは覚えている限りではほとんどなかったから驚いた。

好きな人がこんなにも愛しているものってどんな素晴らしいものなんだろう…と未知の世界を覗きたくなるアレは、オタクに限らず多くの人が抱いたことがあるごくごく普通の欲求だと思ってるけれど、“それ”がSixTONESを好きになった私にとっては今までやんわりと距離を置いてきた“音楽”だったのだ。

 

SixTONESを経由して音楽を知ると面白いのが、六者六様の個性のように、当然のごとくそれぞれが全く違った音楽を好きなところだと思う。

ジェシーは懐メロ系、きょもちゃんは邦ロック、たろぴは洋楽、樹ちゃんはHIPHOP、北斗くんはサブカル系、こちくんは衝撃のアンパンマンマーチ。……アンパンマンマーチ。全部聴いた。全部。

私くらいの音痴になると曲の難易度が高いかどうかとかさえもいまいちよく分からないけれど、さすがにアンパンマンマーチが易しいことだけは分かる。幼児にも歌えるのでたぶん私にも歌えるじゃん…と元気が出ました。ありがとう優吾氏、音楽は広く深く皆に等しく優しいのですね。

 

あとはSixTONESがラジオ等で紹介してくれた曲だけでなく、樹ちゃんについて理解を深めたくてラップ曲を漁るうちにCreepy Nutsさんに流れ着きCreepy Nuts最高じゃん〜の人間になったり(のちに樹ちゃんもファンだと発覚してツイッターで暴れた)、マイナーっぽいバンドを開拓してメンバー脱退に少し悲しんだり、自分はボカロ調の曲がわりとめちゃめちゃ好きなのだとこの歳になって知った。世代なので細胞にボカロが叩き込まれているのかもしれない、給食の時間に校内放送で爆音で流されていたし。(ボカロ好きだし音楽の趣味としては北斗くんがいちばん近い気がする。北斗くん、ボカロ…好きだろ? ウミユリ海底譚……すきか?)

 

そんなこんなで、SixTONESを好きになって音楽を聴く体勢が本当に整ったと思う。人並みになった気がする。

音楽番組はMステしか存在してないと本気で思ってたのに、今やSixTONESデビュー前にRAM-PAM-PAMぶちかましてくれたLove musicさんに永遠の愛を誓ってるし、音楽アプリは人生において一度もインストールしたことなかったけど今は月額いくらか払って音楽を聴いています。安い。でもSixTONESはサブスク解禁していないので、ちょっと良さげなCDプレーヤーも買ってみたりもした。強い。(ていうかSixTONESはよサブスク解禁してくれ…)(事務所…頼む…)

 

 

そしてようやく話が2021年1月7日“on eST”生配信ライブに戻るけれど、本当にこれが良すぎてしまった。先ほども書いたけど、これもうon eSTが最高とかSixTONESが最高とかをそういうのを突き抜けて、音楽ってほんと最高じゃん……って泣いた。

実は私、5日6日と参戦できず、それどころか参戦日当日までアルバムさえも届いていなくてほとんど何も知らずの状態でこの日を迎えてしまった。セトリ初っ端のMad Loveからまあ初見だったし当然それはMad Loveのみに収まらなかったんだけど、事前情報がなかったからこそ、SixTONESの振り幅をよりダイレクトに感じることもできた気がする。自分たちで“SixTONESらしさ”を決めない、とデビュー前後によく6人は言っていたけれど、本当に想像以上にその言葉通りだと腰を抜かしそうになった。

そして何より、何も知らなくても、楽曲そのものからSixTONESの表現、照明演出等… すべてひっくるめて彼らの“音楽”が永遠に最高で、一瞬も見逃せなかった。“分からないからつまらない”時間なんて少しだって存在せず、ずっと“音楽”だった。音だけがきれいに揃って“音楽”ができるのではないのだと、初めて理解した。

画面越しに熱が伝わる。呼吸が、視線が、解釈が、こだわりが、全部を伝えようとしてくる。この人たちが何にも縛られず、それぞれがそれぞれのかたちで音を咀嚼し、愛し、自由に楽しんでいるということを肌で痛いほど感じる。なんだこれ、最高だ、間違いなく私はいま最高の渦にいる。

 

──ああ、音楽って、最高だ。

 

世間一般的な音楽技術の善し悪しとか優劣とか正直今でも全然分からないし、今後も一生分かることはないだろうし、何が音楽のてっぺんに相応しいとかも分からない。

でも「分かる」とか「分からない」とかそんな面倒臭いことを考える前に、今まで目を細めて見てきたものを心から自然と「最高だ」と思わせてくれた音楽が最高じゃなくてどうするんだ。それが最高じゃなかったら何を最高だって言えるんだ。

まさに、on eSTはツアータイトルに込められた『最上級の時間である、グループの最上級を出す』コンサートそのものだった。

 

それから少しして、音楽最高だー!なんて思った自分に驚きつつ、ふと気が付いてしまったんですけど……わたし本当はきっとずっと音楽が好きだったんですよね。きっとね。

好きだからこそできないことがもどかしかったし、からかわれるのが嫌だったし、分からないことが悔しかった。だから中途半端に触れるくらいならと蓋をして近づかないようにして、でもたまにいいなあって覗いてみて。その度に怪我して、あーあやっぱり自分には向いてないんだなって諦める。

考えてみれば「音楽が苦手です」とはしょっちゅう言っていたけれど、「音楽が嫌いです」と言ったことはなかった気がする。

 

それでも、“自分なんかには楽しめない”という呪いを二十数年かけ続けた効果は大きくて、あと数年、あと十数年、この呪いが解けるのが遅ければ私は本当に音楽というものを嫌いになっていたのかもしれない。何なら実は好きだったからこそ、いつか憎みさえもしたかもしれない。

でも、音楽が大好きで音楽を心から楽しんでいるSixTONESを応援するうちに。“ラフにラブを”と、自分たちを応援する時は気負いすぎずににいてくれと言うSixTONESに。私は勝手に救われてしまっていたのだ。

ああ、よかった。よかったなあ。SixTONESというアイドル、音楽集団のおかげで私は音楽を憎まずに済んだ。

そして音を素直に楽しむ喜びを知ることができたからこそ、またひとつ、私の世界は心ときめく未知の色で華やいだのだ。SixTONESに出会ったあの頃のように。

 

 

 

 

 

 

 

最後になりましたが、SixTONESデビュー1周年本当におめでとうございます!!!!!! そして、いつも素敵な音楽をありがとう。あなたたち自身の存在はもちろん、あなたたちの魅せる音楽に幾度となく救われてきました。

どうかあなたたちが今、この一年を振り返り幸せだったと思えていますように。そしてこれからもずっとあなたたちの傍にはお喋りの絶えない仲間と、こよなく愛す音楽がありますように。あとは……あとは、今日という日がいつまでもあなたたちにとって特別に素敵な日でありますように!

願い事ばかりで欲張りなようですが、要はこれからもSixTONESの幸せを心から願っています。

*1:ポエム全開で恥ずかしいのでURLは載せないでおきます(ポエムはいつものことだよ)

*2:今の個人ブログ(俺リリ)ではない